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AIのスキルは、増やすほど呼ばれなくなる

執筆:株式会社JQIT(技術広報)

AI に手順を覚えさせるスキルは、増やしても重くなりません。代わりに説明が黙って消え、呼ばれなくなります。80本足して185トークン、スキル集を入れて自分の2本が0文字になった実測をもとに、入れる前に見る基準を整理しました。

AI コーディングツールにスキル(決まった作業手順を覚えさせる仕組み)を入れると、できることが増えます。 公開されているものも数多くあり、入れるだけなら1分で終わります。

そうなると、多くのチームが同じことをします。片っ端から入れるのです。

ところが測ってみると、増やすほど呼ばれなくなっていました。 重くなるからではありません。 入れたスキルの説明が、黙って消えるからです。

この記事は、これまで公開してきた検証記事5本を、1つの流れにまとめ直したものです。 個別の詳細は、それぞれの記事にリンクしています。

1. 増やしても、重くはならない

まず、よく心配される点から確かめました。スキルを増やすとコンテキストを圧迫するのか。

自作スキル47本の環境に、80本足して127本にしました。

スキル本数

入力トークン

47本

82,179

127本

82,364

増えたのは185トークンだけでした。80本足して、この差です。

理由は、スキル一覧に文字数の予算があるからです。予算の範囲で説明文を載せ、 超えたぶんは載せません。だから本数を増やしても、一覧の大きさはほとんど変わりません。

詳細は Claude Code にスキルを80本足しても、増えたトークンは185だったにまとめました。

ここまでは良い知らせに見えます。 問題は、超えたぶんがどうなるかです。

2. 超えたぶんは、説明が消える

GitHub でトレンド入りしていたスキル集37本を、自作の47本に足しました。

入力トークン

自作47本

82,255

+ スキル集37本(計84本)

81,971

284トークン減りました。 足したのに減っています。

減った先を追うと、元から入れていた自作スキル2本の説明が、388文字→0、350文字→0 に なっていました。名前だけが残り、何をするスキルなのかが消えた状態です。

説明の文字数

呼び出し回数

よく使う2本

変化なし

42回 / 25回

消えた2本

388→0 / 350→0

0回

削られるのは、呼び出し回数が少ないものからでした。 入れたばかりのスキルは0回なので、 真っ先に落ちます。

そしてエラーは出ません。 一覧には名前が並ぶので、画面を見ても気づけません。

詳細は GitHubトレンドのスキル集を入れたら、自分のスキル2本の説明が消えたに書いています。

実務的な結論は1つです。 スキルは入れた数ではなく、説明が載っている数で数えるべきです。

3. 指示書だけのスキルと、実装を持ち込むスキルは別もの

では何を入れるか。中身の型が2つあり、コストがまったく違います。

スター6万の Agent Skill を入れて、自作の同種スキルと比べました。

自作

導入したもの

実装

SKILL.md 1本

Python 308ファイル / 32MB

起動時のトークン

3,225

約90,000(28倍)

標準的な Windows

動く

動かない(Python 3.12+ が必須)

28倍の差がありました。しかも手元の環境では動きませんでした。

一方、指示書1枚だけのスキルは軽く済みます。3万スターの i-have-adhd を測ったところ、 導入によるトークン増は実質ゼロで、出力は 1,884字 → 1,066字(−43%)。 3問×3回、9回とも短くなりました。

ただし情報も減っています。 技術キーワードの数は 8〜30% 減りました。 「短いのに中身は同じ」ではありません。

入れる前にコストは確認できます。 claude plugin details を叩くと、 常時いくつ・起動時いくつのトークンを使うかが表示されます。

4. 選定を、人の判断に戻す

スキルの良し悪しを自動で採点するツールもあります。ただし測っているのは構造です。 手順が明確か、具体的か、失敗時の分岐があるか。

書いてある内容が事実として正しいかは、どの採点項目にも入っていません。 むしろ具体的に書かれた誤りほど、「具体性」の項目で高得点になります。

採点とは別に「おかしいところはないか」と聞くと、同じモデルが矛盾に気づきます。点数には出ません。

詳細は スキルの採点ツールは、書いてある内容が正しいかを見ていないに書いています。

まとめ

  • 増やしても重くならない。 80本足して +185トークン。一覧には文字数の予算がある
  • 代わりに、説明が黙って消える。 呼び出し回数が少ないものから落ち、名前だけが残る
  • エラーは出ない。 画面上は正常に見えるので、運用では気づけない
  • 指示書1枚のスキルと、実装を持ち込むスキルは別もの。 起動時トークンで28倍の差が出た
  • 採点ツールは構造しか見ない。 内容が正しいかは、人が確認する工程が要る

スキルは資産ですが、置いておくだけでは資産になりません。 入れた数を増やすより、呼ばれているものを絞って残すほうが効きます。

各項目の検証データは、リンク先の記事に実測値を載せています。

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